旬の数字 2018年8月1日

W杯ロシア大会、外国人観光客の経済効果は15億ドル!



執筆:谷口賢吾(BBT大学大学院 講師)

2018FIFAワールドカップロシア大会はご覧になりましたか?

日本国内では、日本代表の決勝トーナメント進出で大いに沸きました。今大会は番狂わせが多く、ドイツの予選リーグ敗退、優勝候補といわれたブラジル、アルゼンチン、スペイン、ポルトガルが次々と破れ、サッカーの勢力図が変わったとも思われる大会で、フランスの2度目の優勝で幕を閉じました。今後語り継がれる大会になったかも知れませんね。

その中で、今大会1か月間の訪ロシア外国人観光客の経済効果は15億ドル(約1685億円)と期待以上の効果があったとの推計が発表されています(注1)。これは、ロシア政府がビザなし渡航を認めるようにしたこと、開催地の都市整備を進めたこと、手荒い警備の抑制などにより、期待以上の成果となったようです。

今W杯のロシア経済効果全体では、2013~23年までの10年間で約260~308憶ドル(約3兆円)とされています(注2)。

一方、今回大会に向けたロシア国家の投資金額は、132億ドルであったと言われております。さらには、大会終了後のスタジアムの維持費は年間10億円以上の見込みであるようで、毎年赤字が続くようです。

このように、オリンピックだけでなく、サッカーW杯も大会後に「負の遺産」が残るなど、開催国とってはスタジアムやインフラを今後どのように活用するかは大きな課題として残ります。

2018年W杯ロシア大会のレガシー問題もそうですが、2020年の東京オリンピック/パラリンピックでも同様な課題が存在します。

世界のスタジアム運営を見ると、スタジアム単体ではなく、周辺ビジネスを取り込んで収益化する傾向にあります。米国では、「ボールパーク」にみられるように、スタジアムのIT化、エンタテイメント・レジャー要素の導入等、収益化が進んでいます。

2020年東京オリンピック後の施設活用は、「従来型」「公共事業型」でネガティブに発想するのではなく、新たなスポーツ・エンタテイメント・レジャーが融合する事業機会として収益化・活性化する方策を考えたいですね。

注1:ロシア最大手銀行の国営ズベルバンクの試算
注2:ロシア大会組織委員会の試算

出所:
日経新聞電子版 ※最終アクセス2018年8月1日
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO33195060Q8A720C1000000/


執筆:谷口賢吾(たにぐち けんご)

ビジネス・ブレークスルー大学、同大学院 専任講師
地域開発シンクタンクにて国の産業立地政策および地方都市の産業振興政策策定に携わる。
1998年より(株)大前・アンド・アソシエーツに参画。
2002年より(株)ビジネス・ブレークスルー、執行役員。
BBT総合研究所の責任者兼チーフ・アナリスト、「向研会」事務局長を兼ねる。
2006年よりビジネス・ブレークスルー大学院大学講師を兼任。
同秋に独立、新規事業立ち上げ支援コンサルティング、リサーチ業務に従事。
現在、フューチャリズム株式会社 代表取締役社長。

<著書>
「企業における『成功する新規事業開発』育成マニュアル」共著(日本能率協会総合研究所)
「図解「21世紀型ビジネス」のすべてがわかる本」(PHP研究所)